賢い馬ほど余計なエネルギーを使わない

 

クラブツアーの際に、

馬を選ぶ立場の皆さまからいろいろな質問を受けます。

馬を売る側としては、

各々の馬達のセールスポイントとなる事柄を言うことが多いのですが、

一見マイナスに受け取られるような内容でも、

実はそうではなく逆にその馬の楽しみな可能性を考えられるものがあります。

今回はそのことについて具体的に解説します。

 

 

ポイント

・獣医師の世話にならない馬ほど良い

・人間にとって目立たない馬ほど競馬で輝く!?

 

私自身、いろいろなクラブツアーに足を運び、馬をチェックすることはもちろんのこと、

その馬を引いているスタッフの方にその馬のセールスポイントを聞いたりもします。

そのなかで、当然販売側は良いイメージを持ってもらえるようなことを簡潔に話しますが、

実は私達現場側は決して悪い意味ではなく良い意味でとらえているのに、

購買者の方々にとっては逆の意味に感じられているであろう言葉があります。

それは…

 

①「ここまでは特に大きな印象もないです。」

 

②「決して他の馬に比べて目立つ馬ではないです。」

 

日頃、馬に携わる側の人間にとって、

ふとこれまでを振り返って各々の馬を考えた時に、

はっきりと頭に浮かんでくる馬は、

よほどその中で目立つほど馬体が素晴らしい馬や、

(関連記事→【視点の差別化】敢えて遠くから見る ~ルガールカルムから学ぶ~

 

気性の激しい馬(良い意味でも悪い意味でも…)、

もしくは…ケガや病気が多く獣医師にお世話になり共に治療をしてきた馬などです。

 

 

馬の3つの行動特性からも能力の一旦が垣間見れる!?

 

馬はもともと野生動物として生きてきた頃から群で生活している生き物です。

どの群においても、その中で順位があります。

自分がどの馬よりも上の立場で、

どの馬よりは下の立場か…など普段から、

“蹴る、噛む、走る”の3つの行動によって争っています。

 

ですので、

 

放牧地でかすり傷など軽度の怪我から、

蹴られて骨折したりするなど重度の怪我を負う馬がいます。

どの馬にも怪我をするリスクはあるのですが、

不思議と牧場にいる間に全くと言ってよいほど怪我をしない馬がいます。

無駄な争いはせずに、自分の身体を痛めつけないことをまるでわかっているかのようです。

 

そして、そういう馬は放牧先から厩舎に入る際、

人間が引き手で馬を引っ張る時に先頭集団ではなく最後尾の最終集団でもない中間あたりに位置していることが多い傾向があります。

順位が上の馬から入口に集まっており、下位集団は最後尾に並んでいるのですが、

余計なエネルギーを使わずにその群の中で生活する賢さを兼ね備えています。

 

この賢さは、後々トレーニングを積んで競走馬として走る上で重要になってきます。

オンとオフの切り替えができることにつながり、

優秀なアスリートには必要不可欠なことです。

どれだけ能力があっても、遠征先の馬房でイレ込んだり、

競馬場のパドックで汗をかくくらい立ち上がったり…

能力を思う存分発揮できない馬は少なくありません。

 

何度も順位争いに挑む馬ほど怪我をする機会が多く、

それは獣医師の世話になる機会が自動的に多くなり、

世話する現場の人間は少なからず「ここまで治療等頑張ってきた馬だから…」と

自然と情が入ってしまうものです。

 

また、先程の話に戻りますが、

馬を厩舎に入れる際に目立つのは最初の群(順位が上)と最後尾の群(順位が下)です。

ですので、中間順位層いわゆる怪我が少ない馬達は印象が薄いのです。

先述の①②の言葉が決して悪い意味ではなく、

むしろその言葉をかけられた馬はアスリートとして非常に楽しみな存在だと言えます。

 

実際に群のボスや上位層の馬達は、牧場では強く速く見えるのですが、

その後の競馬場での競走成績が相関するかと言ったら…

私のこれまでの経験上…ないです

逆に、牧場時代に目立たなかった馬の方が息が長く活躍している傾向があります。

競馬雑誌等で、GI馬の故郷特集で生産者をはじめ携わった人のお話が載っていることがありますが、

実際にあまり記憶にないという話が少なくないです。

皐月賞馬イスラボニータに関しても、

以前競馬雑誌で「幼少期の記憶はほとんどないくらい普通の馬でした。」と

牧場スタッフがおっしゃっていたほどです。

 

長くなってしまいましたが、自分が質問した際の相手の言葉には注目してください。

いろんなヒントが隠されているはずですから!