外観から中身を見抜く―長躯短背について―

 

胸部の形状は、馬の運動能力および持久力に重要な影響を及ぼします。

その中で、心臓や肺がおさめられている空間である胸腔(下写真参照)について着目しますが、両者の拡張のために十分なスペースが必要です。

正面からも側面からも慎重に評価する必要があります。今回は、側面からについてです。

解剖学的な説明から入っていきますが、お付き合いください!

全て読んだ後に、きっとためになる内容だったと思っていただけるはずです。

では始めます。

胸腔とは、可撓性(かとうせい:物質の弾性変形のしやすさを示す)のある湾曲した肋骨によって形成され、横隔膜で腹腔と隔てられています。

すなわち、肋骨の形と湾曲が、十分な胸腔スペースを有するかどうかを決定する大事なパーツなのです。

(正面から見た時の胸部の骨格図)

背中から胸骨まで幅の広い人間の胸と異なり、馬の胸は楕円形です。

背骨から胸骨まで長く、左右に狭く、肋骨は胸の両側の骨格を形成します。

肋骨のすぐ外側には肩甲骨があり、その下に位置する上腕骨を含めたこれら二つの骨の間に馬の胸は位置しています。

ほとんどの馬が18本の肋骨をもっているのですが(まれに17本・19本の馬もいます)、第1~8肋骨まで(前方から数えて)は底の部分で胸骨と連結しています。

それより後方の肋骨は胸骨ではなく軟骨によって連結されます。

馬が呼吸するときに最大の胸部拡張を可能にする大事な部分です。

 

 

ポイント

・側面から見て、後方に突出するような形状の肋骨が良く、それは外観で短い背・腰、そして長くて深い福袋として表れる

・腰(最後の肋骨とお尻との間)のスペースが非常に小さいのが理想

・筋力よりもさらに重要なのは、激しい運動中に能力の全てを発揮するための胸腔を有すること→呼吸能力が優れている

 

広く大きな胸腔が理想ですが、それは同時に横隔膜も大きくなります。

胸腔と腹腔との境であり、肺に空気を引き込み、蛇腹のように動いて、それを押し出す役割をして、呼吸作用を助けているのが横隔膜です。

広くなればなるほど、より効果的になり、呼吸するときに肺が膨らむスペースが増えます。

上の図の2頭の肋骨の形状に着目してください。

(またまた手書きですいません…。いきなり実物よりも絵の方が違いが示せると思って載せていますでご了承ください)

①の馬の肋骨は、外側に曲がって後方に突出するような形状をしています。バネのスプリングのように、より伸縮可能が構造になっています。

それに対して、②の馬は、側面が平たくて直線的です。狭い胸郭の馬の構造です。

 

同じ2頭の図ですが、腰(最後の肋骨とお尻の間の部分)に着目して比較すると、①の方が短く、それによってキ甲の後ろからお尻の手前部分までの背線(背と腰の部分のライン)が全体のバランスからすると短く見えます。

また、同時に脇腹部分が①の方が深く、腹袋が豊かに見えます。

②のような腹袋が浅い馬は腹筋の発達が遅く、スタミナに欠けると言われていますが、これまでの理屈から納得できます。

いくら筋力が素晴らしく、身体能力が優れていても、それを発揮できる持久力がなければなりません。

‟長躯短背”が走る馬の特徴と考えられているのは、

これらの内部の構造が結果として、「短い背中と長くて深い腹線」として外観のバランスに表れているのです。

(*長躯短背:胸の下端から後肢までの腹線が長くて、背線が短いことを表した言葉)